[技術コラム]【要注意】設計者が陥る「三端子レギュレータ」の落とし穴 — 異常発熱のメカニズム

設計者が陥る三端子レギュレータの落とし穴。異常発熱のメカニズム

電子回路設計において、三端子レギュレータは、その名の通り3本の端子を備え、安価で比較的に簡単に定電圧回路(例えば)を構成できるため、多くの電子製品の電源回路に使用されています。
例えば、ECショップなどで、1個当たり60円ほどで入手できる部品もございます。

しかし、設計者が陥りやすい「落とし穴」として、三端子レギュレータを使用する際に異常発熱を引き起こし、設計を破綻させてしまうケースがあります。
一見スペック上問題なく動きそうに見える回路構成でも、実は大きな危険が潜んでいるのです。

一般的な三端子レギュレータ

ヒートシンク取付可能タイプ
小型タイプ
チップタイプ
目次

異常発熱を引き起こす設計条件

仮に、「入力電圧24Vから、出力電圧5V、電流1Aを取り出す電源回路を構成したい」という要求があったとします。

例えば日清紡マイクロデバイスのNJM7805FAを参考にご説明します。
部品の最大電流などのスペックだけを見れば、この要求はクリアしているように見えます。

NJM7805FA
■主な仕様
・出力方式:シリーズ
・出力正負:正電源
入力電圧:~35V
出力電圧:5V
最大出力電流:1.5A

・許容損失:16W
・リップル除去比(PSRR):78dB
・パッケージ:TO-220F

しかし、この状態で回路を動かすと、たちまち部品が温度上昇し、最終的に温度異常により出力が停止してしまいます。設計者は、この問題がなぜ起こるのかを理解する必要があります。

落とし穴の正体:電力損失(Pd)の計算

三端子レギュレータで発生する異常発熱の原因は、部品自身が消費する電力損失(Pd)が大きすぎることにあります。

損失(Pd)は、三端子レギュレータにかかっている電圧(V)と、流れ出る電流(I)を掛けた値(P = V × I)で計算されます。
今回の例では、入力24Vと出力5Vの差である19Vがレギュレータにかかっており、これに1Aの電流が流れます。

【損失の計算例】 Pd=(VIN​−VOUT​)×IOUT​ Pd=(24V−5V)×1A=19W

この19Wという損失は、一般的な部品が許容できる範囲を大幅に超えています。

19Wと言ったらちょっとした半田ごてです。15Wでも半田付けできるというぐらいのものなので
「#22 三端子レギュレータの落とし穴」https://youtu.be/z0IW6PRFuJE?t=500(8分20秒頃)より

熱抵抗とシャットダウン機能

部品の熱特性を示す指標として熱抵抗(例:60℃/W)があります。
これは「1Wの損失あたり、部品温度が何℃上昇するか」を示すスペックです。

もし19Wの損失が発生すると、単純計算では19W × 60℃/W = 1,140℃もの温度上昇となり、部品の半田付けが溶けてしまうレベルに達します。

実際には、半導体の内部にはシャットダウン機能が内蔵されており、約150℃で動作して出力を停止させます。つまり、設計上は動作しない、または不安定になることが確定しているのです。

まとめ:損失を考慮した部品選定の重要性

特に三端子レギュレータを使う際は、単に最大電流などのスペックだけを鵜呑みにせず、必ず損失を計算することが極めて重要です。

この計算により、「高い入力電圧の時には1Aも取れない」、あるいは「大きな電流を流したい時は高い電圧をかけられない」といった、スペック表には直接現れない利用上の制約があることに気づくことができます。
高性能な回路を設計するためには、部品の熱特性を理解し、要求される条件(電圧と電流)を達成できるかを事前に損失計算で確認することが不可欠です。


弊社カイロスキでは三端子レギュレータを含む回路全体で低発熱/保護設計を実施すると共に熱分散と放熱経路の最適化により信頼性を高めた電源基板を実現いたします。
詳しくは電源基板・電源回路開発ページをご覧ください。

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